8位: “35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか
評価
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日本が突きつけられている現実と政策提言
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以前読んだ「ワーキング・プア」ほど悲惨ではないが、今日本が直面していている現実を、35歳世代を中心にNHKならではの丁寧な取材で追っている。
自分(40代「新人類」世代)の例で恐縮だが、30年前の父親の年収にいまだに追いつかない。もちろん業種や環境は違うのだが。しかし、われわれ世代は本書によるとまだマシな方。R35世代は年収は上がらず、正社員になれなかったらずっとなれず、なれたとしても労働条件がかなり厳しい。年収が上がらないから子どもを作る気になれない、さらに結婚もできず親にパラサイトするしかない…という具体例が次々登場する。
これは巷間言われる「小泉・竹中改革の悪弊」が全ての原因ではなく、IT・グローバル化の世界的潮流の中、製造業を中心とした新興国への移転があげられる。「モノ作り大国」日本で多くの雇用を生み出していた業種がアジアに移転し、また08年からの金融危機も追い打ちをかけた。ではその他の業種は安泰かというとそうではなく、デフレに陥って産業界全体が苦しんでいるのはご存じのとおりである。
日本では高度成長期の終身雇用制度がまだ生きていて中高年の首は切りにくいので、新卒採用を抑える。そして正社員になれなかったものはスキルが身につかず(一つに括るのはいささか乱暴だが)、契約や派遣労働を転々とし一生を送る。この辺りは同じNHKの「ワーキング・プア」と同じだ。さらに悪くすると「今日、ホームレスになった」というさらに悲惨なドキュメンタリー本がある…
本書前半部は厳しい実例満載であるが、後半部分は海外の成功例を引き合いに出しながら、政策提言を行っている。英国ではNPOの力できめ細かい就労支援を行い、失業率を下げる努力をしている。これは失業手当だけよりずっといい。何より働くことによって自分が必要とされているという意欲が出てくる。また、少子化に対してはこれだという決め手はないが、(識字率が上がると必ず出生率は下がるのだから、先進国には共通の悩み)残業を減らすなどの子育て世帯の労働条件改善、民主党の政策になった「子ども手当」支給、保育支援などが上げられる。
もちろん、それだけでは先の世界的な流れに掉させるものではなく、新しい産業で雇用を生み出すのもなまなかなことではない。国内需要といっても社会全体が疲弊してしまえばそれも増加しないだろう。だが少しづつでも民主党政権(まだ頼りないが…)が新しい政策を打ち出して、日本を変えてくれることを期待したい。35世代だけではなく、社会全体がアノミーに陥らないように。
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