10位: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
評価
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台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる
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高野秀行氏が絶賛していたので買ってみた。
帯には「伊坂幸太郎,宮部みゆき,小島秀夫」が絶賛していたりする。
SF?普段あまり積極的に読むことは無いジャンルだけれど,そこまで書かれると・・・
知のカタマリのような本だ。近未来の先進国によるテロ対策の現場を描いているのだけれど,その内容がすごい。そのリアルさ,本当らしさというのか,まるで今まさにこの現場に放り込まれたら,信じてしまいそうな架空の世界である。
架空を描く。その方法は様々あるだろうけれど,「まるで見てきたかのように描かれる」と,読者はその読む手を止められない。繊細さと鋭さを持ったお話が,著者の計算されたゆったりとした語り口で描かれる。身震いしそうなほどの冷たさを持った本書は,その引き込み方には熱さを持っている。
「伊藤計劃」 プロジェクト伊藤と名づけられた著者は,もうこの世には居ないのだけれど,膨大な知識を,その緻密な計算のもとに詰め込んだ傑作。
「ゼロ年代最高のフィクション」とか,ややもすれば敬遠してしまいそうな宣伝文句だけれど,この10年での掘り出し物であることは間違いない。
「若者は絶対的で純粋な自由というものがあると思い込んでいる場合が多い。若者はそうた偽りの自由を通過し,謳歌する必要があるんです。大人になって様々な決断を迫られる状況になったとき,みずから選ぶ自由がより高度な自由だと,リアルに感じてもらうためにはね」
台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる。物語でも言葉が重要視されるけれど,そのためにもこれほどまでの緻密さが必要だったのかもしれない。
文庫で読んだ。ハヤカワの独特なつくりなのか,この本だけなのか,ページの端がやたらと狭い。また,第1部を読み終えるまでは,少し戸惑いを覚えるかもしれない。でも,そんなことを忘れさせてくれる至極の一冊。是非。
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