9位: 名著講義
評価
|
武士道と経済活動をどうやって両立させるのですか、藤原先生
|
ヨーロッパ諸国は16世紀頃から世界に乗り出していき、貿易・植民地経営を通じて世界中から富をかき集めることを、100年、200年、300年とやり続けてきた。そうして社会資本を整備し、個人資産の蓄積を進めていった。さらにその富をあらゆる手段で運用して増やしてきた。その資産運用の伝統の上に立って、美術館を建てたり、奨学金・年金を払ったり、社会福祉をやってきた。知識人もその事情は熟知しているため、何か不祥事が起こっても、「金を動かすような仕事から手を引け」という声にはならず、「もっと仕組みを透明なものにせよ」という声になるようである。
福沢諭吉は慶応義塾の中に理財学科を作った。それは新しい時代には、資産を運用できる人間が必要になると考え、育成しようとしたのである。しかし残念ながら福沢のような考え方は少数派で、社会からは受け入れられなかった。大多数は夏目漱石や森鴎外のように、武士道・儒教の倫理観を引きずっていて、「金を動かす仕事はいやしい行為だ」と低く見て軽蔑していた。そのくせ彼らは欧米の制度は真似しようとしたのである。美術館を運営したり、学問研究に助成金を払う制度を作ろうとした。しかし欧米社会の根幹にある資産運用の伝統を無視しながら、制度だけ真似したらどうなるのだろうか。遅かれ早かれ行き詰まり破綻するではないか。考えていることが根本的に矛盾している。
わたしは藤原先生のファンであり、著作を長年読ませていただいている。多くのことを教えていただき感謝している。しかし藤原先生は、日本の伝統的知識人の矛盾をそのまま受け継いでいらっしゃるように見える。武士道精神に優れた部分はあるが、経済活動とどう両立させればいいのだろうか。その答えはまだ充分出ているわけではないのだ。
|
| 他のコメントも読む
|
|
|