9位: 自己を見つめる (放送大学叢書 6)
評価
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憂愁感の中からじわっと生きる力が湧いてくる、正面突破の哲学入門
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先年(2008年)亡くなったドイツ近現代哲学の泰斗による放送大学の講義テキストを元に編まれた哲学書です。でも、難しい抽象概念や専門用語に振り回される心配は一切ありませんので、ご安心を。著者最晩年の著作ということもあって、ある程度の年齢に達し、人生経験を経てきた読者には、しみじみと「まさにここまでの俺の人生そうだったよな」と実感される生々しい記述に溢れています。むしろ、いまどき珍しくなった直球勝負の「人生哲学」の本といえます。人生経験の諸相から一歩踏み込んで、そこに秘められた真理を探る思索を始めるときの、やさしい導きの書となってくれるでしょう。
自分自身の体験や身の周りの社会を見渡せば、有限で儚く間違いや悪を犯す人間や、無責任で油断のならない世間というものが否応なしに実感され、誠実に生きようとすればするほど、おのずと憂愁感が立ち昇ってくるものですが、そこにこそ人生の本質があり、試行錯誤しつつも毅然たる態度で自己の人生を引き受け、理想に向けて少しずつ近づいていくこと以外の生き方を人間はすることができないと、著者は静かに力強く語りかけます。その嘘のない現実認識に、微かな希望と前進する意欲が湧き上がってくるのです。
本書は15の章で構成されていて、いずれも身近なテーマから哲学の思索が開始されていく展開になっていて、どこからでも読み始めることができます。私自身は、「経験」「時間」「孤独」「世間」「死」といった章に、ただならぬ迫力を感じました。
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